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東京地方裁判所 昭和53年(行ウ)35号 判決 1980年12月10日

原告 韓平治

被告 国

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

(昭和五二年(ワ)第三六五一号事件につき)

1  被告は原告に対し金二〇万円を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

(昭和五三年(行ウ)第三五号事件につき)

1  被告は原告に対し金一三万円を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

(両事件につき)

主文同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求原因(前記両事件について)

1  原告は昭和五一年四月中旬から府中刑務所において受刑していた者であるが、国の公権力の行使に当る公務員である同刑務所長は在監中の原告宛に郵送差入のあつた別紙目録記載の図書四六点(以下「本件図書」又は同目録記載の番号に従い「本件図書<1>ないし<46>」という。)について、同目録記載のころいずれも差入の不許可処分をした(以下「本件各処分」という。)。

2  しかしながら本件各処分はいずれも違法な公権力の行使である。

(一) 憲法の保障する基本的人権は受刑者といえども人として存在している以上当然に享有し得るものであつて、行刑当局により恩恵的に与えられるものではない。受刑者が刑執行のため身体の自由を拘束されるのはやむを得ないところであるが、拘禁が法律に基づいて容認されることによつて被拘禁者のすべての人権が当然これに包含され、その侵害が許されるということにはならないのであつて、ただ拘禁目的を達する必要上、必然的に制限せざるを得ない範囲と限度においてのみ制限し得るに過ぎない。受刑者にとつて図書の差入はその閲読の前提をなすもので、憲法第一九条の思想の自由、第二一条の表現の自由としてとらえることができる。すなわち何人も、いかなる図書であろうと、これを読む自由を有するが、この自由は思想の自由、表現の自由そのものではないが、思想の自由、表現の自由が全うされるためには思想形成の自由がなければならず、読む自由はこのことから必然的に導き出される思想形成の手段としての基本的人権であつて、この原理は受刑者にあつても排除されるものではなく、刑務所長の許可により差入による図書閲読がはじめて可能となるというものではない。ただ当該図書の差入を許すことが拘禁目的を害し、あるいは施設の正常な管理運営を阻害する等の明白かつ現在の危険が存する場合に限り制限し得るに過ぎない。監獄法第五三条及びこれを受けた同法施行規則第一四二条、第一四三条は在監者が差入を求める権利と自由を保障した規定であると解されるのであり、差入人について接見及び信書発受の場合のような制限(同法第四五条第二項、第四六条第二項)はない。差入人の身上調査に関する同法施行規則第一四六条の規定は以上のような基本原則によれば確乎たる調査を求めたものではなく、差入物の責任の所在が明らかになる程度で十分であると解すべきである。

(二) 府中刑務所長は本件図書のうち図書<12>ないし<15>については差入人が「非親族」であるとの理由により差入を不許可にしたのであるが、前記のとおり差入人については接見及び信書発受の場合のように親族に限るとの制限はないのであるから、その点からだけでも右処分は明らかに違法である。

右の図書を除くその余の図書については、府中刑務所長は監獄法施行規則第一四六条により差入人の身分関係を調査したが在監者との続柄が不明であるとの理由でその差入を不許可にしたのであるが、図書差入の不許可は右のとおり受刑者の基本的人権を制限するものであるから単に差入人との関係不詳ということで不許可とすることは許されず、基本的人権を制限してまでもこれを拒否しなければならない程の管理運営上の必要性がなければならないところ、本件図書は定期公刊されている政治機関紙の類であつて、その差入を許すことは監獄の管理運営上何ら支障を来たすものではない。

(三) 本件各処分の違法性は次の事実によつても明らかである。

(1) 本件図書<1>の差入人添田はつみについては、原告が東京拘置所在監当時同人から四〇点以上の物品の郵送差入を受けており、同拘置所の領置品基帳には「添田はつみ」の氏名とともに続柄は「友人」と記載されているところ、府中刑務所においては右領置品基帳を継続して使用しており、また原告は同拘置所在監当時同人からの信書を受領し(その消印は、昭和五〇年一月一七日付、同年二月一三日付、同年六月二八日付、同年九月九日付、同月一二日付、同月三〇日付、同年一〇月七日付及び昭和五一年一月二六日付である。)、原告も同人宛に信書を発信し、面会も行なつているのであるから、右領置品基帳その他接見・信書発受記録等を調査すれば、本件図書<1>の差入人添田はつみと原告との関係は容易に判明した筈である。

(2) 本件図書<2>ないし<21>、<24>ないし<46>の差入人田中五郎、中田一郎、伊藤宣弘、中村光雄及び日角八十治については、これらの者らからの右の各図書と同一図書の郵送差入が他の受刑者、例えば昭和五一年一一月一二日に中野刑務所から府中刑務所に移入された太田敬次郎(刑期二年)に対しては、関係不詳であつても許可されているのであつて、本件各処分は法の下の平等を定める憲法の趣旨に反する極めて不当な処分である。しかも府中刑務所長は原告が本件訴え(昭和五二年(ワ)第三六五一号事件)を提起するや、同刑務所領置係に田中五郎、中田一郎、伊藤宣弘及び日角八十治と太田敬次郎との関係を不詳とせず、親族とするよう指示し、同係員をして太田に対しその旨要求せしめ、その結果右田中五郎らは昭和五二年四月中旬からは「知人」と、同年五月初旬からは「友人」と、同年六月初旬からは「従兄」とそれぞれ表示されて郵送差入が許されているのである。

仮に右田中五郎らと原告との関係が当初不明であつたとしても、右のとおり同人らから太田敬次郎に対する差入を許可したことによつて、これらの者の実在及び責任の所在は府中刑務所長において知悉された筈であるし、本件図書差入の手段は法令の範囲内の合法的なものであるところ、差入物にかかる責任の所在等は各封筒の記載によつて十分明らかなのであり、この記載によつてもその「者」が実在するかどうかわからないなどというのは郵便物に対する信頼の原則を真向から否定するものであつて、社会通念に著しく反するものである。

(3) 原告は昭和五一年九月から昭和五三年八月までの間、二七回にわたり「救援連絡センター」から郵送された図書「救援」、「氾濫」等及び昭和五一年五月から昭和五三年八月までの間、二七回にわたり「新地平社」から郵送された図書「新地平」等につき、その都度差入の許可を受け、また昭和五三年三月三〇日梁啓勲から五〇円切手六枚の差入を許されている。これらの場合いずれも郵送差入品処理票によつて原告に告知されたが、同票に記載されていた差入人は氏名住所のみで、原告との続柄は無記入か、又は「関係不詳」の赤スタンプが押捺されていたのである。このように府中刑務所長は原告に対し関係不詳者からの郵送差入を許可していたのであり、本件各処分がいかに恣意的な処分であるかが明らかである。

3  以上のとおり府中刑務所長は政治機関紙類のみをとりあげて関係不詳の名の下に恣意的かつ差別的に本件各処分を行なつたものであり、又は少くとも適正な刑務行政を行なうべき注意義務があるのにこれを怠り、軽々しく関係不詳として本件各処分を行なつたものであるから、同所長には故意又は過失の責任がある。

4  原告は本件各処分により受刑者として多大の精神的苦痛を被つたが、これを金銭で評価すると、本件図書<1>ないし<20>につき一件あたり金一万円、<21>ないし<46>につき一件あたり金五〇〇〇円とするのが相当である。

よつて、原告は被告に対し、損害賠償として本件図書<1>ないし<20>の分の合計金二〇万円(昭和五二年(ワ)第三六五一号事件)及び<21>ないし<46>の分の合計金一三万円(同五三年(行ウ)第三五号事件)の各支払を求める。

二  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因1の事実は認める。なお、原告は昭和五〇年四月一六日東京地方裁判所において、詐欺、恐渇、道路交通法違反、業務上過失傷害及び犯人隠避教唆の罪により懲役四年八月の判決を受け、昭和五一年三月一六日右刑が確定し、同年四月一六日東京拘置所から府中刑務所に移入した受刑者である。

請求原因2の事実中、(一)の主張は争う。同(二)の事実のうち本件図書<12>ないし<15>を除く本件図書差入を不許可にした理由の点及び本件図書が定期公刊されている政治機関紙類であることは認めるが、その余は否認する。本件図書<12>ないし<15>については、封筒に非親族不許とのスタンプが押捺されているところではあるが、これは差入の許可、不許可の処分権限がない一領置係職員が押捺したものに過ぎなく、これでもつて右差入に係る処分をしたものではなく、右の各差入人が原告の処遇上害があるか否か判明する程度にその続柄等が府中刑務所長に了知されていなかつたため、右四件の差入を許可しなかつたのであつて、不許可処分の理由は他の図書の場合と同じである。

請求原因2(三)の(1)の事実のうち、原告が東京拘置所在監当時添田はつみから原告宛に四〇点を超える差入があり、領置品基帳によると同人と原告との続柄について「友人」と記載された箇所があること、府中刑務所では東京拘置所で使用していた右領置品基帳を継続使用していること、及び原告が同拘置所在監中原告主張のとおり添田はつみから八通の信書を受領し、同人が原告と面会したことがあること(その回数は約二〇回である。)は認めるが、その余の事実は否認する。

同2(三)の(2)の事実のうち、太田敬次郎が昭和五一年一一月一二日中野刑務所から府中刑務所に移監されたこと、同人の刑期が二年であること、同人に対し田中五郎、中田一郎、伊藤宣弘、日角八十治、中村光雄及び青華社から機関紙類の郵送差入があり、府中刑務所長が差入を許可したこと、右許可した図書の中に本件図書<3>ないし<10>、<21>、<22>及び<30>の機関紙が含まれていたこと(このうち<5>及び<9>以外のものは閲読も許可した。)、太田に対する郵送差入の許可にあたつて、郵送差入品処理票に太田と田中五郎、中田一郎及び日角八十治との関係を当初「関係不詳」又は「知人」と記載し、昭和五二年六月ないし七月ころから「いとこ」と記載した事実のあること及び伊藤宣弘についても「いとこ」と記載した事実のあることは認めるが、その余は否認する。

同2(三)の(3)の事実のうち、府中刑務所長が救援連絡センター、新地平社及び梁啓勲から原告に対する差入を許可し、その都度原告に告知したこと及び右差入について差入品処理票に記載されているのは住所・氏名のみであり、続柄については無記入か又は関係不詳と記載されているものがあることは認めるが、その余は否認する。なお梁啓勲からの差入は面会による差入である。

同3及び4の事実は否認する。

三  被告の主張

1  監獄法第五三条によると在監者への差入は命令の定めるところによりこれを許すことができるものとされているところ、同法施行規則第一四六条第一項は、「在監者ニ差入ヲ為サンコトヲ請フ者アルトキハ其氏名、職業、住所、年齢及ビ在監者トノ続柄ヲ調査ス可シ」と規定しており、この趣旨は差入人が誰であるかを明らかにするとともに、差入人と在監者との関係を明らかにすることによつて、在監者特に受刑者の改善、更生及び社会適応化に害となる悪関係を断つとともに、事故防止及び事故発生後の処置に資するためであり、このことは同法施行規則第一四六条第二項が前記調査の結果差入が在監者の処遇上害があると認められるときはこれを許さない旨規定しているところからも明らかである。

ところで刑務所は刑の執行場所としての刑事施設であり、受刑者をそこに拘禁することによつて外部との交通を途絶し、もつて受刑者の改悛を促すとともに、受刑者の性格を改善、更生し、更には受刑者の従前からの人的関係のうち受刑者が社会生活に復帰した際にこれに適応するに害となるような悪関係を断つことにより社会への適応化に資して再犯を防止することにある。そこで監獄法及び同法施行規則は自由刑の自由剥奪の趣旨に基づき、受刑者の外部との交通方法である接見・信書・差入について、これを恩恵的なものとしてとらえ、これら外部との交通により受刑者が好ましくない社会関係を継続することのあることを考慮して、極めて制限された範囲で許しているに過ぎないのである。

右のような原則によるならば、受刑者に対する差入を許可するには、受刑者と差入人との続柄等法令で要求している事項が明らかになつていることが受刑者処遇の前提として必要であり、これが明らかでない差出人からの差入を認めたのでは外部との交通を断つとの刑務所の制度的存在意義そのものを没却することになるし、外部との交通を途絶することによつて受刑者に改悛を促すこともできなくなり、更には受刑者の改善、更生及び社会適応化に害となる悪関係を断つことにも支障を及ぼすことになる。従つて監獄法施行規則第一四六条第一項の調査をしても在監者と差入人との続柄が明らかでないときは差入を許すべきではないものというべきところ、府中刑務所長は右規定に基づき本件図書の差入人について原告の身分帳等により原告との続柄等を調査したがこれを明らかにすることができなかつたので、本件図書の差入を認めなかつたものであつて、本件各処分には何らの違法もない。

2  原告は本件図書<1>の差入人である添田はつみについては領置品基帳等により続柄は容易に判明した筈であると主張する。

たしかに原告は東京拘置所に在監中、添田はつみから四〇点を超える差入物を受けるとともに同人との間で接見及び信書による交通をし、右差入の事実については領置品基帳に、また右接見及び信書発受の状況については接見表・書信表に記載されているところではあるが、これらはいずれも原告が未決収容者としての処遇を受けていたときのことである。

ところで監獄法による被拘禁者の自由の制限は被拘禁者の種類により異なるものであり、ことに受刑者と刑事被告人との間で区別すべきことは同法自ら認めているところである(第四六条、第四七条等)。このことは差入についても例外でなく、同法施行規則第一四六条は「在監者」と規定しているのみではあるが、同条第二項は「処遇上害アリト」と規定しているところからすれば、これは専ら受刑者について規定したものであり、未決拘禁者に対しては刑事訴訟法に基づき逃亡又は罪証隠滅の防止を目的として被疑者又は被告人の居住を監獄内に限定して身柄の適正な確保を図ることが主として要請されているものと解される。すなわち未決拘禁者に対する差入人については受刑者の場合に考慮しなければならないような、例えば差入人が偽名を使つているか否か、実在するか否か、どのような関係があり将来好ましい影響を及ぼし、在監者の将来の生計を促進することを期待し得るか否か等の改善に関する事項が明らかになつている必要はないのであり、しかも未決拘禁者に対する接見及び信書発受については監獄法上その相手方の制限はない。しかしながら当該被拘禁者が受刑者となつた後においては受刑施設の長がその責任と裁量において当該差入人が受刑者にとつて処理上害があるか否かを判断すべきものであつて、未決拘禁時代に許されていたことのみをもつて、そのまま差入が許されるものではない。本件の場合府中刑務所に保管されている未決時代の関係記録によれば原告と添田はつみとの一応の間柄を窺い知ることはできるものの、これは単に「友人」というに過ぎないのであつて、原告の処遇上害があるか否かを判断する程度に続柄等が府中刑務所長に了知され得るものではないのである。従つて東京拘置所時代の経緯をもつて添田はつみからの本件図書<1>の差入を不許可とした本件処分に裁量権の濫用があるとはいえない。

3  原告は太田敬次郎に対する差入が許されているのに原告に対する差入を許可しないのは違法であると主張する。

しかしながら同人に対する田中五郎、中田一郎、伊藤宣弘、中村光雄及び日角八十治らからの図書差入は、これらの者らから原告に対する差入とは場合を異にしているのである。すなわち太田敬次郎は中村光雄から郵送された分については昭和五二年一月一三日同人宛に、日角八十治から郵送された分については同月二四日人民新聞社宛に、田中五郎、中田一郎及び伊藤宣弘から郵送された分については同日現代社宛に、それぞれ郵送差入を依頼する旨の特別発信を府中刑務所長に願い出たが、その理由は勉学のため閲読を希望するというのであり、同所長がこの必要性を認めて特別発信を許可したことに基づいてそれぞれ郵送差入があつたものである。このような経緯からいつて、郵送された段階において当該差入人につきその人物との関係で太田の改悛、更生及び社会適応化のため害となるか否かについてまで調査する必要性はなかつたのであり、従つて太田と右差入人との具体的続柄が不明であつても、そのこと自体は郵送差入を認めることの障害となるものではないし、かえつて右特別発信を許可したことに基づいて郵送されて来たものであることからすれば、この郵送差入を認めなければならないものというべきである。従つて太田に対する差入を許可したことは本件各処分の適法性に何ら影響を及ぼすものではない。

また原告は太田と田中五郎らの関係を「知人」又は「従兄」と記載したことをもつて、府中刑務所長が意図的に工作したかのような主張をしているが、この点は原告に対する本件各処分の効力には何ら関係がない。

なお原告は、田中五郎らからの太田に対する差入が許可されたことにより右の各差入人の実在及び責任の所在については府中刑務所長の側において確認されている筈である旨主張するが、太田の場合は右のとおり特別発信を許可したことに基づいて郵送されて来た経緯からこの差入を許可すべきものと判断したのであるから、このことにより府中刑務所長が差入人を知悉していたということはできない。ちなみに府中刑務所は、原告に対し田中五郎らから継続して差入が行なわれていたところからその存在を明らかにして原告との関係を特定させるため照会状を発送したが、いまだ回答がなく、このことは当該差入人が架空の存在であるか又はその存在を公にすることをはばかる何かがあるとの疑を抱かせるものである。

更に原告は差入物に対する責任の所在は封筒の記載により明らかであると主張する。しかしながら受刑者が従前の交友関係を刑務所内においても維持せんがため不正を犯し、或いは名前を偽つて差入を行なう事例は多数発生しているのであつて、これを原告についてみても、原告は府中刑務所入所時親族申告票に「韓正子」を原告の従妹として申告していたところ、後日かねてから交際のあつた獄中者組合の救援対策の仕事をしていた井上礼子なる人物と服役後も引き続き親交を保つ手段として架空の人物「韓正子」を設定したものであることが発覚し、また原告が姪(兄の子)として申告していた「韓相」なる人物から原告に対し数回郵送差入があつたが、これも後日「韓相」なる人物は実在しないことが判明し、差出人が偽名を使つて差入をしようとしたものであることが明らかになつたのである。このように受刑者の場合、郵送物の封筒に記載されている氏名等だけでその者が真実実在するとの証しとなるものではないのである。

4  原告は、関係不詳者からの差入を許可されたことがあるのに本件図書の差入を不許可にしたのは違法であると主張する。

しかしながら前記監獄法施行規則第一四六条の趣旨によれば当該差入人と受刑者との具体的関係が不明であつても当該刑務所にとつてその差入人を知悉しかつその者が受刑者の処遇上害がないと判断される場合にあつては具体的関係が不明であることは差入許可の障害となるものではないというべきところ、府中刑務所長が「救援連絡センター」、「新地平社」及び「梁啓勲」からの差入を許可した理由は次のとおりである。すなわち「救援連絡センター」については、同センターは昭和四四年ころ結成され、被拘禁者に対する差入、通信、接見、弁護人選任、その他刑事、民事及び行政訴訟の支援並びに行刑当局に対する被拘禁者の待遇改善要求、機関紙「救援」の発行等のいわゆる救援活動をしている団体であつて、その結成以来府中刑務所にその代表者又は関係者が来庁し、差入や接見のみならず待遇改善に関して幹部職員と面談したことも度々あり、同刑務所長はその所在地、活動状況及び特性等を知悉していたものであり、また「新地平社」についても、同社は月刊労働者総合誌「新地平」を発行している株式会社であつて、その活動、責任の所在等は登記によつて明らかであつたところ、同所長はこれらを斟酌して受刑者の改善、更生及び社会適応化に害がないものと判断し、これに基づいて差入を認めたのであり、原告との具体的な続柄が不明であつたこと自体は差入許可の障害にはならなかつたのである。また梁啓勲からの差入については、昭和五二年一二月二七日朝鮮人総連合会三多摩本部常任委員会社会部長梁啓勲が現金を持参して府中刑務所に来訪し、同刑務所に在監中の朝鮮籍収容者に切手購入のうえ配分差入の申出があつたことから、この要望を汲み、当時在監していた朝鮮籍収容者一名あたり五〇円切手六枚宛を均等分割で交付することとし、原告には昭和五三年三月三〇日これを交付したものであるが、府中刑務所長は差入人である朝鮮人総連合会の存在、活動内容及び差入の趣旨を十分承知したうえで差入を許したものである。

以上のとおりであつていずれにしても本件図書の差入の場合とは異なり、本件各処分の違法理由とはなり得ない。

四  被告の主張に対する原告の反論

1  被告は受刑者への差入人との関係で極めて制限された範囲内で許されると主張する。しかしながら差入については接見、信書発受の場合の監獄法第四五条第二項、第四六条第二項のような制限はないのであるから、「極めて制限された範囲で不許可とされる。」ものというべきであり、差入人の身上調査に関する同法施行規則第一四六条第一項の目的は事故防止ないし事故発生後の処置に資するため責任の所在を明らかにするにあり、これが明確であればことさら続柄に拘泥する必要はない。本件図書のうち「解放」は革命的労働者協会の機関紙で「現代社」が、「団結の砦」は日本社会主義青年同盟中央本部の機関紙で「青年文化社」が、「党旗」はマルクス主義青年同盟の機関紙で「党旗社」が、「人民新聞」は「人民新聞社」が、それぞれ定期公刊しているものであつて、差入人のうち田中五郎は「解放」紙編集発行人青華社はその発行所である現代社内の事務所の名称、中田一郎は「団結の砦」紙編集責任者、伊藤宣弘はその発行所である「青年文化社」の関係者、中村光雄は「党旗」紙編集発行人、日角八十治は人民新聞の発送者で、以上はすべて発行所の住所から発送されている。従つて差入物に対する責任の所在は差入物自体において明確であり、単なる続柄の不明などは全く問題にならない。

2  被告は添田はつみからの差入について、原告の身分帳等により調査したが続柄が不明であつたと主張しているが、事実関係からみると身分帳等を調べずに不許可としていることが明らかであるし、差入については差入人の身上調査の結果「その差入が在監者の処遇上害あり」と認められたときに不許可とすることができるものというべきところ、府中刑務所長は「害があるかどうか判断し得る程度に了知されなかつた」ことにより不許可処分をしたというのであつて、このような運用は監獄法施行規則第一四六条の解釈上許されない。ことに身分帳等によれば添田はつみが「友人」であることが明らかであるからなおさらであり、許可することによつて害される公益は何ら存在しない。

3  被告は、太田敬次郎に対する差入を許可したのは同人が郵送差入を依頼する特別発信に基づいて差入がなされたことによるのであつて、原告の場合とは異なると主張する。しかしながら監獄法第五三条によれば在監者が差入を求める意思表示をした場合に限つて差入が保障されるなどということはなく、ただその差入が在監者の処遇上害あると認められる場合に限り不許可とされるに過ぎないことは法文上明らかであり、右主張には何ら理由がない。しかも太田敬次郎が監獄法上当然に発信が許される親族等を介して郵送差入の特別発信をしたのであればとも角、そのようなことがないのであるから、特別発信の存否は何ら理由にならない。なお被告は本件差入人の照会未回答をいうが、被告が主張するところの照会状が発せられたのは昭和五三年八月三一日付であつて、時期からしても本件各処分とは全く無関係である。

4  被告は「救援連絡センター」、「新地平社」は所長が知悉していたと主張するが、いくら所長が知悉していたとしてもこれらと原告との関係が不明であれば、やはり続柄は不明なのであつて、被告の主張は矛盾も甚だしい。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  原告は本件各処分は違法な公権力の行使であると主張するので判断する。

1  本件図書(但し、<12>ないし<15>を除く)差入不許可の理由が差入人と原告との続柄不明によるものであることは当事者間に争いがなく、証人西村意弘の証言によれば、府中刑務所における収容者宛の郵送差入品の取扱は、庶務課受付係が受取つた後、第一種郵便によるものは保安課書信係に回付され、同係でこれを開封し差入品として扱う物品であればこれが会計課領置係に回付され、また第三種郵便によるものは庶務課受付係から直接会計課領置係に回付されること、領置係においては領置係長(領置物品取扱主任官)の下で受刑者の身分帳、書信票、接見簿、分類処遇票、環境調査報告書等の書類により差出人の氏名、職業、住所、年齢及び在監者との続柄等監獄法施行規則第一四六条第一項所定の事項を調査し、その結果身分関係が明らかになつた場合は郵送差入品処理票を作成するが、調査の結果身分関係が明らかでない場合は一律に差入不許可(釈放時交付)とすることとしており、これを収容者別の袋に入れて保管して置くこと並びに本件図書については前記<12>ないし<15>の場合も含めて領置係において原告に関する右同様の書類により各封筒に記載されている差出人と原告との続柄を調査したがどのような具体的関係にあるかが明らかにならなかつたことが認められる。

原告は、本件図書<12>ないし<15>の差入不許可処分の理由は、差入人が非親族であるとの理由によるものであると主張するところ、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙イ第一ないし第四号証(但し各表紙の書込部分の成立は争いがなく、また各郵便官署作成部分はその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定される。)並びに弁論の全趣旨によれば、これらの図書の郵送に使用された封筒の表面には刑務所職員による「非親族不許」ないし「非親族」との書き込みがあることが認められ、また成立に争いのない甲イ第二五号証の一、二、証人西村意弘の証言及び原告本人尋問の結果によれば原告は昭和五一年一〇月下旬ころ府中刑務所の担当看守に対し本件図書<1>の差入の有無及び不許可の理由について尋ねたところ、同看守は非親族からの差入は受付けないと説明し、その後同刑務所の中部区長も同様の説明をしたため、更に原告は昭和五二年一月中旬ころ会計課宛に差入の取扱に関し面接を申入れる旨の願箋を提出したところ、数日後担当看守が会計課から回答を告知するとしたうえで、定期刊行物等の差入は受けているが非親族からのものであるから不許可である旨及び不許可物については告知義務がないので面接に応ずる必要はない旨の説明文を読み上げたことが認められ、右の説明はその時期からして右<12>ないし<15>の図書差入不許可の説明をも含むものであると推認される。しかしながら処分が違法であるとは法秩序に照らしその処分が客観的に正当性を有しないことをいうのであるところ、本件図書の差入人と原告との具体的関係が明らかでなかつたことは前記のとおりであるし、封筒の記載の点については証人西村意弘の証言によれば本件図書<12>ないし<15>についても領置係長が差入人の身分関係不明により差入は不許可にするとの判断をしたうえ同係員に対し他の不許可物品と一緒にしておくよう指示してこれを渡したところ、同係には不許可とされた信書も回付されて来ており、非親族からの信書の受信を許可しない場合は封筒に非親族不許可のスタンプを押捺して収容者別の袋に入れて保管しておくことになつているところから同係員がその種の信書とあわせて右図書を入れた封筒にも前記のように記載してしまつたものであることが認められ、また前記担当看守を通じてなされた告知の点はその内容において説明不足のきらいがあるけれども、不許可の理由が非親族であることのみで、それ以外にないとする趣旨であつたとまでは認められないから、結局右のような各事実のみでは前記認定を覆えすには足りない。

2  そこで続柄不明の理由による差入不許可処分の適否について考えるに、監獄法第五三条第一項は「在監者ニ差入ヲ為サンコトヲ請フ者アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許スコトヲ得」と規定しているところ、懲役刑は受刑者を一定場所に拘禁して社会から隔離し、その自由を剥奪するという苦痛を科するとともに、その改善、更生を図ることを目的とするものであり、刑務所は多数の受刑者を収容し、これを集団として管理する施設であるから、受刑者と外界との交通は一般的には禁止され、ただ拘禁の目的と刑務所の保安及び紀律保持の観点から支障がない場合に個別的に許すことができるものと解するのが制度の趣旨に照らし当然であり、右監獄法の規定はこのような趣旨に基づき外界との交通の一態様である差入の許否を監獄の管理者の裁量に委ねたものと解される。ところで監獄法は差入が許される差入人の範囲について接見及び信書の場合のような明文の制限規定(同法第四五条第二項、第四六条第二項)を置いていないが、右のような観点からすれば差入人は何人でもよいということにはならないのであつて、例えば物品それ自体に着目すれば支障がないものであつても該差入人からの差入を許すことが受刑者の改善、更生の見地から、或いは刑務所の保安及び紀律保持の見地から好ましくない場合があり得ることは十分考えられ、かかる場合には刑務所長の合理的裁量により差入を許さないこともできるものと解すべきである。監獄法施行規則第一四六条第一項が」在監者ニ差入ヲ為サンコトヲ請フ者アルトキハ其氏名、職業、住所、年齢及び在監者トノ続柄ヲ調査ス可シ」と規定しているのは調査の結果物品のいかんにかかわらず差入人と受刑者との人的関係から差入を不許可とすることのあり得ることを前提としたものというべきであり、同条第二項が「前項ノ調査ノ結果其差入人ガ在監者ノ処遇上害アリト認ムルトキハ之ヲ許サズ」と規定している趣旨はその文言からしても、また前記のとおり差入が本来制限的であることから推究しても、調査の結果受刑者の処遇上有害であると認められる場合の規定であつて、第一項の調査によつても差入人の身分関係が不明であつて、処遇上有害か否かを判定できない場合には許可しなければならない旨を定めたものとは解されず、かかる場合には前記監獄法第五三条第一項及び同法施行規則第一四六条第一項の趣旨に基づき、受刑者の改善、更生を促しかつ刑務所の保安、紀律を保持する職責を有する刑務所長の合理的裁量により差入を不許可とすることができるものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに証人西村意弘の証言によれば府中刑務所は比較的改善困難な累犯者を収容している施設であつて受刑者には暴力団関係者も多く、外界の悪しき交友関係を維持し様々な手段を用いてこれらの者との交通を図ろうとする事例も多発しており、これを原告に限つていつても原告は入所時親族申告票に「韓相」を姪と、「韓正子」を従妹と、「韓太郎」を兄として申告していたところ別人がこれらの氏名を使用して差入をしたことが明らかになつた事例もあり、差入人との続柄を直接受刑者本人から聞きただして正確な身分関係を掌握することは実際上困難であるため、同刑務所では差入人の身分関係の調査を前記のとおり身分帳等の書類によつて行ない、その結果身分関係が不明な場合には差入に対して慎重にならざるを得ない実情にあることが認められ、この認定を左右する証拠はない。このような実情の下においては差入人の身分関係が不明であつて受刑者の処遇上有害か否かの判定ができない以上差入を許すことは好ましくないとして一律にこれを不許可とすることもやむを得ないところであつて、右は刑務所長の合理的裁量の範囲内の行為であるというべきである。本件各差入にかかる物品がいずれも定期公刊されている機関紙類であることは当事者間に争いがなく、このことと後記原告に対する新地平社らからの差入を許可していたとの事例を合わせ考えると本件各処分はいささか慎重過ぎるきらいがあるとの批判があるかもしれないが、本件は、右のとおり差入人の身分関係が不明であり、従つて処遇上有害であるか否かの判定ができなかつたものというべき場合であるから、その妥当性はさて措き、いまだ違法であるとまではいえない。

3  原告は本件各処分が違法であるとの事情を種々主張するので以下検討する。

(一)  本件図書<1>の差入人添田はつみは原告が東京拘置所在監中から差入をし、これが許されていたとの点について

原告が東京拘置所在監当時添田はつみから原告宛に四〇点を超える差入があり、領置品基帳によると同人と原告との続柄について「友人」と記載された箇所があること、府中刑務所では同拘置所で使用していた右領置品基帳を継続使用していること及び原告が同拘置所在監中同人から八通の信書を受領し、また同人が原告と面会したことがあることは当事者間に争いがない。

しかしながら原本の存在と成立に争いのない甲イ第二三号証並びに弁論の全趣旨によれば、原告は昭和五〇年四月一六日東京地方裁判所において詐欺、恐喝等の罪により懲役四年八月の判決を受け、昭和五一年三月一六日右刑が確定し同年四月一六日東京拘置所から府中刑務所に移入したものであることが認められるところ、未決拘禁の目的は刑事訴訟法に基づき逃亡又は罪証隠滅の防止を目的とし被疑者又は被告人の居住を拘置所内に限定してその身柄の確保を図るにあるから、これに対する自由の制限は受刑者に対する場合と異なることはいうまでもないところであつて、原告が東京拘置所に在監中添田はつみから差入を受け、信書を受信し、同人と面会したことがあるとの一事をもつて原告が受刑者として府中刑務所に移入した後も当然同人からの差入が許されることにはならないことは明らかであるし、証人西村意弘の証言によると前記のような領置係の調査によつても添田はつみが原告の「友人」であるという以上にどのような友人であるのかが明らかにならなかつたことが認められるのであるから、同人からの差入を不許可とした処分の適法性を覆えすには足りない。

(二)  太田敬次郎に対しては同一人からの差入を許可していたとの点について

昭和五一年一一月一二日中野刑務所から府中刑務所に移入された太田敬次郎(刑期二年)に対し田中五郎、中田一郎、伊藤宣弘、日角八十治、中村光雄及び青華社から機関紙類の郵送差入があり、府中刑務所長は右差入を許可したこと並びに右差入物品の中には本件図書と同一図書も含まれていたことは当事者間に争いがない。

しかしながら成立に争いのない乙イ第七ないし第九号証並びに証人西村意弘の証言によれば、太田の右郵送差入は同人が勉学のため中村光雄宛に昭和五一年一二月二〇日付で、また現代社及び人民新聞社宛にいずれも昭和五二年一月二四日付で郵送差入を求める旨の特別発信の願箋を提出し、所管課である保安課において検討したうえ同所長がその必要性を認めて許可したところ、右発信に基づいて郵送されて来たものであつて、このような図書の郵送差入があることは予め同所長の了知するところであり、かつ、このような手続によつて差し入れられた物については所管の保安課において許可された内容に合致するかどうか判定したうえで差入を許可する取扱であつたことが認められる。このような経緯に照らすと太田への右差入は差入人と受刑者との関係について刑務所長が予め一応の認識を有し、かつ差入人との関係では処遇上有害ではないと判断していたものというべきであるし、また右のような取扱は多数の在監者に対する差入を僅かな相当職員により処理せざるを得ない刑務所における事務処理の実情からみても、太田を不当に優遇し、反面において原告を不当に差別して取扱つたとまではいえず、本件各処分の適法性に影響を及ぼすものではない。

また証人西村意弘の証言並びに原告本人尋問の結果によれば田中五郎、中田一郎及び伊藤宣弘らは原告が東京拘置所在監中郵送差入をしていることが認められるが、それのみではこれらの者らからの差入を府中刑務所においても許さなければならないとはいえないこと添田はつみについて述べたと同様であるし、原告は太田敬次郎に対する差入を許可したことによつて各差入人の実在及び責任の所在は府中刑務所長の知悉するところとなつた筈であると主張するが、それのみでは原告との関係が明らかになつたとは認められないので、右主張は理由がない。

なお、太田に対する差入の手続に関し、郵送差入品処理票に記載される差入人と太田との関係が、田中五郎、中田一郎及び日角八十治につき当初「関係不詳」又は「知人」とされていたのが途中から「いとこ」と、伊藤宣弘についても「いとこ」と記載された事実のあることは被告の認めるところであり、原告は右記載の変遷は府中刑務所長の指示に基づく旨主張するが、かかる事実を窺うに足りる証拠はない。しかし、何故にかかる記載が許されたのかはまことに理解に苦しむところであるが、太田及び原告に対する差入に関する取扱が適法なものとして是認されるべきこと前記のとおりである以上このことは本件各処分の適否には直接関係がないものである。

(三)  原告が救援連絡センター等関係不詳者からの差入を許されていたとの点について

府中刑務所長が救援連絡センター、新地平社及び梁啓勲から原告に対する差入を許可し、その際差入品処理票の続柄が無記入か又は関係不詳として処理されたものがあることは当事者間に争いがない。

しかしながら証人西村意弘の証言によると、救援連絡センターについては、昭和四四年ころ結成された当時は府中刑務所ではいかなる団体か見当もつかず、同センターからの差入は一律に認めていなかつたところ、その後同センターの関係者が同刑務所を訪れ種々説明をし、これによつて同所長においても同センターが拘禁者の救援活動、訴訟事務の援助活動等を行なつている団体で差入を認めても処遇上害がないとの判断に達したため、以後は差入を許可するようになつたこと、新地平社については月刊雑誌を発行している株式会社であつて、責任の所在も明らかであると判断したため差入を許可したこと、梁啓勲については昭和五二年一二月在日朝鮮人総連合会三多摩本部に所属する梁啓勲と名乗る者が同刑務所を訪れ、同所教育部長に面会して祖国を同じくする者にクリスマスの贈物として郵便切手を差入れたいとの相談をしたうえ、在監中の朝鮮籍収容者に一人当り三〇〇円程度宛の郵便切手の差入をしたものであることが認められる。してみると本件における差入人につき右と同程度の事情が明らかとなつていたと認めるべき証拠のない以上、これらの事例をもつて本件各処分が違法であるとする根拠とはなし得ない。

4  以上のとおりであるから本件各処分が違法であるとの原告の主張は理由がない。

三  よつて、その余の点を判断するまでもなく本件各事件における原告の請求はいずれも失当としてこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤田耕三 原健三郎 田中信義)

別紙目録<省略>

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